詩 3
・・・静かに・・・隣にいる愛しい名を呼んだ
意味はないけれど・・・その名を口にするだけで。
胸の高鳴りと共に身体が熱くなる。
愛しい人はただ・・・振り向いて優しく髪の毛を撫でてくれる。
そんな時間が好きで、好きでたまらなくて・・・
このまま、永遠に時間が止まってくれるなら・・・と願う自分がいた。
そう思う自分に微かに苦笑しながら、愛しい人の肌に肌を寄せた。
そして・・・耳元でそっと・・・つぶやいてみる。
もしも・・・俺が大病をして、あと数週間の命だと宣告されたら・・・お前はどうする?――
分かりきった答えなのに・・・
嘘でも聞きたくない言葉。
それでも・・・答えが欲しくなるのは・・・幸せだと感じているから。
その口元から、その声で、そのまっすぐな瞳で、聞きたいと思ったから・・・。
その問いに。彼は俺の頭を撫でながら・・・静かに笑みをこぼした。
――お前が望む限り・・・傍にいる・・・一秒でも長く――
そう言った彼は俺の肩を抱き寄せて、力強く抱きしめた。
たったそれだけのことで、心が落ち着いてくる。
『弦一郎・・・俺はお前を置いて逝かないから・・・』
愛しい彼の瞳を見つめ返し、閉じている双眸を静かに開いた。
『そんなことはさせないぞ、蓮ニ。俺の隣はお前だけなのだからな・・・』
ただ、隣にいて、何でもない話をする。
ただ・・・それでけでも・・・幸せと感じる――
――もしも・・・俺が大病をして、あと数週間の命だと宣告されたら・・・――
了